月の光がきれいな夜、北京の中心部から西へ約五キロ、玉淵潭一帯は暗く、静まりかえっている。だが、玉淵潭の八一湖埠頭のあたりだけは、色とりどりのネオンが夜空に映え、人々の交わす笑い声が沸きあがっていた。ここが北京を巡る水上観光の発着地の一つである。
長さ20メートルもあろうかという豪華客船が客を満載して埠頭を出て行くと、入れ替わりに苫舟の群れが埠頭に押し寄せ、次々に接岸する。船に乗ろうと待っている観光客の長い列ができ、その近くを物売りが、記念品や食品を抱えて走り回る。
この苫舟は、「烏篷船」を模して造られている。船の中央部に覆いが造られ、雨風がしのげるようになっている。「烏篷船」は魯迅が彼の作品の中で、故郷の紹興を描くとき、たびたび登場するものだ。もともと農民が生活の足として使っている小舟だったが、長年、雨風に晒されて、苫が黒く変色してしまい、「烏のように黒い苫舟」と言う意味で「烏篷船」と呼ばれるようになったという説である。
舟には三人から五人ぐらいが乗れる。舟の中に置かれた小さなテーブルにはお茶や飲み物、お菓子、果物などが並べられ、親しい友人同士やファミリーで楽しむこともできる。
舟の櫓を漕ぐのは、江南の水郷からきた農家の人たちだ。ゆっくりと移り過ぎてゆく両岸の風景を説明し、時には客の質問にも答えながら、櫓を漕いでゆく。
舟に胡弓や笛などの奏者を招いて、好みの音楽を聴きながら水上観光を楽しむ人もいる。「北京で働いている江南出身の人たちが、しばしここで故郷を懐かしむこともあるのですよ」と、櫓を漕ぐ船頭さんは言った。
【苫舟観光メモ】4月15日から11月初旬まで、毎日午前10時から午後10時まで運航される。コースは八一湖埠頭から浜角園埠頭までで、所要時間は往復2時間。料金は一船貸切りで280元。楽士を乗せる場合は一人に付き150元。船上で、ピーナツ、スイカの種、蓮の実(夏季のみ)などが無料で出される。船上で上海の有名料理が食べられる。料金は4人前150元、8人前200元。(飲み物は別)
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