什刹海は都市北京の西北端の緑色の真珠です。ここは自然景観と人文景観が集まって一体となっており、文化財や遺跡が高度に集中し、民族活動の歴史は悠久であるため、北京の歴史文化の名所であり、都市北京の発祥の地ともされています。2004年、精彩を放つ什刹海の光り輝く文化のために、西城区は廠橋街道を什刹海街道に改名しました。2005年、中国国家地理雑誌社の主催した「中国で最も美しい地方」という特集の中で、什刹海は中国で最も美しい五大都市区の一つに選ばれました。2008年に北京でオリンピックが行われた際、什刹海周辺の多くの住民が「オリンピックの家」として大量の外国人観光客を受け入れました。2009年、什刹海は国家観光局から4A級の観光地に選ばれました。

什刹海では唐の時代に水辺に住んでいた人々がいました。今は北海にある三角魚の書斎に描かれているコカの庭と景山の後ろの鎮山閣のそばにある「唐槐」、それらは歴史の証人です。什刹海は遼と金の時代白蓮潭と呼ばれ、遼と金の時代に什刹海の蓮の花が生い茂っていたことが分かります。元の時代の什刹海は積水潭や湖と呼ばれていました。清朝まで、徳勝橋から西の水域は依然として積水潭と呼ばれ、北岸に浄業寺があるため、浄業湖とも呼ばれていました。徳勝橋から銀錠橋の間の水域は、西北岸に古刹什刹海寺があるため、什刹海と呼ばれました。湖の周囲に十の寺院があるため、什刹海と呼ばれるとも言われています。銀錠橋から東の水域は蓮の花が咲き乱れ、当時都で蓮が最も美しい場所とされたため、「蓮の花の小さな湖」と名付けられました。新中国の成立後、上述の三つの水域をさらに分けた西海、後海、前海の総称を什刹海としました。前三海（北海、中南海）とは区別され、什刹海または後三海と称されます。

「先に什刹海あり、後に都市北京あり」

元朝が金朝を滅ぼした後、かつて豪華な金中都（広安門の一帯で、蓮花池の水系を利用）は元軍に火を放たれ廃墟となりました。再び場所を選んで都を建設する時、元世の祖フビライは丞相の劉秉忠の提案を聞き入れ、積水潭と北海、中南海の水系を利用して都を建設しました。この時の北海と中南海は、遼の時代と金の時代に建造されたため、すでに北京で有名な皇室の庭園になっており、当時有名だった「燕京八景」の「瓊島春蔭」、「太液秋波」がありました。その他、当時の金中都の皇宮はすでに燃やされていたため、フビライは北海の「瓊嶼」、「大寧宮」（遼と金の時代に建造された仮の御所）に一時滞在して、積水潭と北海、中南海の東側を新しい都にするため中軸線に基づいた築城を行い、元の都――大都（すなわち北京）を建造しました。元年から元四年（1267年）に建造を始め、元十三年（1276年）に完成しました。昔の北京に伝わることわざに、「先に什刹海あり、後に都市北京あり。」というものがあります。大都市の中の元室皇宮はまたの名を大内といい、北海の東側に建てられています。皇宮の中の「大明殿」（明清代の奉天殿、太和殿に相当）は大部分が市内の最も高く雄壮偉大な建物です。大都市の街道は縦横に交錯して、整然と碁盤の目に配置されています。東城の南北鑼鼓巷と両側の街道の大部分はまだ元代の作りのままで、さらに「胡同」と呼ばれる北京の街道も元代に始まります。当時大通りと胡同の中でエンジュを街路樹として栽培する計画が立てられ、このようにすべての四合院の門前には自然と二本のエンジュがあります。イタリアの旅行家マルコポーロが元の大都市に来た後、この大都市は世界で最も美しい都市だと言いました。今も北京では元代に建設された古い街道、胡同を目にすることが出来ます。

蓮の花の香りは十里に渡って途絶えない

元朝は大都市の水源と輸送を解決するため、我が国の有名な水利の専門家郭守敬の指導により昌平白浮泉から都市までの利水工事（今なお都に水を引く主な用水路の一部）を行いました。また都市から通州張家湾への輸送（通恵河）の流れをよくしました。

張家湾は我が国の有名な大運河の北方の最終埠頭です。その積水潭中部の水域（つまり後海）の東北岸（今は一帯が焼肉の季節）をこのように使用して、我が国の南北に貫通している輸送の大運河の北方の終点埠頭になります。それゆえに、積水潭は大部分が都市でも最もにぎやかな商業区になります。当時湖内は「胪舳蔽水」で、岸の上は車馬の往来が盛んで、バーや茶館、商人の劇団がどっと集まって、一時期大いに栄えていました。銀錠橋には「銀錠観山」の風景が現れ、都市北京で西を臨む山の一番の眺めとなりました。明・清の時代まで、什刹海はもう埠頭でなく、岸辺の緑の柳は低く垂れ、湖の中で蓮は開き、景色が非常に静かで美しいと言われました。多くの文化人は次々と詞を作り、例えば「都门杂咏」の中に「蓮の花の香りは十里に渡って途切れず、夜の風は歩糧橋まで吹く。」という素晴らしい句があります。「燕京歳時記」には「什刹海は地安門の西にあり、蓮の花は最も盛んで、六月の間淑女がどっと集まる。ふつう花が咲く時は、北岸一帯の景色が最も良く、緑の柳の枝は垂れて、赤い衣服におしろいをつけ、花のように輝く人の顔が、ぼんやりと引き立てられます。本当に人の人となりが分からなくなり、花は花となる。」と記述されています。そのため、高僧はここで寺を修理して廟を建てました。貴族の大臣達は岸辺に場所を選んで庭を築きました。有名人なお金持ちの商人も次々と湖畔に引っ越しました。

名高い文章に集まる名士

什刹海の周囲の主要な王府には、恭王府、醇王府、慶王府、鍾王府、涛貝勒府などがあります。これらの王府は現在完全に保存されています。有名な恭王府の花園はすでに開放されており、前部の府宅原は中国芸術研究院の紅楼夢研究所の職場となり、部門移動後に修築され現在は観光客に開放されています。恭王府の一部も在郭沫若の故居として観光客に開放されています。醇王府の一部は宋慶齢故居とされています。慶王府は職場として使われています。鍾王府は現在北京十三中学校となり、涛貝勒府は輔仁大学の同窓会として、北京師範大学の化学学科が使用しています。近現代の有名人の故居は主に宋慶齢故居、郭沫若故居、梅蘭芳故居、溥傑故居、張伯駒故居、馬海徳故居、張之洞故居、蕭軍故居、田間故居などがあります。

歴代什刹海畔に住んだことがある文化有名人は元代法家の趙孟頫、明朝の文淵閣大学士の李東陽、米万鍾と詩人三兄弟の袁崇道、袁中道、袁宏道、清代の大詩人納蘭性徳などです。納蘭性徳の住む大学士の明珠府（後の醇親王府、宋慶齢故居）は「淥水亭」があり、納蘭性徳はいつもペンフレンドの朱彝尊、陳維崧、曹寅、厳縄蓀、姜宸英などとあずまやで酒を飲んで詩を作っていました。納蘭性徳の有名な「金の人が露盤・浄業寺の観蓮懐をささげ持ちます」という文章があります。「レンコンの風は軽くなって、蓮露は寒く、虹を切って収める。真っ赤な窓に、初めてカーテンをかける。みずみずしい青緑色のふた、斜陽のうちに、魚浪香は浮かぶ。この時閣をかいて、柳は岸に垂れて、起きて髪を梳く。古い遊歴の足跡、道に導かれ、至る所が重く、まったく優れている。芙蓉を思うと、湖上は悠々としている。赤い衣服は放浪し、横になって桃葉が蘭舟を送るのを見る。正午に風は吹いて江南夢を切って、夢の中で菱は歌う。」この言葉の中では什刹海の美しさを書き出すだけではなく、官を退き南に帰らされる親しい友人厳縄蓀の思い出をも表現しています。取り上げる価値があるのは、什刹海はまた我が国の偉大な文学者の曹雪芹と関係があることです。ある紅楼夢の学者は、恭王府の花園は大観園だと考えています。恭王府の前身は和珅府で、和珅府の前はもとは曹家の邸宅で、その時の家屋と庭は小さいだけでした。このような言い方は正確かどうかわからず、今なお紅楼夢の学者たちの考証を待っています。恭王府の北方には大翔鳳胡同があります。胡同内６号は名前を「水井坊」という庭付き住宅で、庭には井戸があり、曹家で使われており、ここも曹家の家屋だったと伝えられています。この二箇所は曹家の家屋かどうかに関わらず、数多くの資料の中に曹家は城壁内の市街（西城）に二箇所と南城の鮮魚口に一箇所の家屋があったと記述されています。

什刹海新景――北京胡同観光

什刹海畔の古い寺院には主に什刹海寺（現在は寄り合い住宅）、匯通祠（現郭守敬記念館）、広化寺（現北京仏教協会所在地、広化寺はかつて北京図書館の最も早い所在地）、浄業寺、広福観、火神廟などがあり、これら道教の寺院は現在修復され一新しました。古石アーチ橋は銀錠橋、金錠橋、德勝橋、万寧橋馬にあります。老舗は焼肉の季、会賢と堂旧阯があります。古い商店街は煙袋斜街、白米斜街、蓮花市場などがあって、煙袋斜街は元代の古い商店街です。近くの城楼の東北には鐘楼、鼓楼があり、西北には徳勝門やぐらがあります。什刹海周囲の胡同の中で最も多いのは古色ただよう四合院や三合院です。現在徳勝門内大通りは拡張され、梅蘭芳故居は開放され、徳勝橋も修復され一新しました。古都の姿を保護するため、大通りの両側には新しく青灰色の四合院と三合院が建て直されました。