中国の古都の一つである北京には、壮麗な宮殿や多くの宗教的施設のほか、颐和園、圓明園、什刹海などの歴代皇帝の御苑が残されている。数ある御苑のなかで紫禁城(故宮)に最も近いものが北海である。
故宮の裏門を出て西北に少し歩くと、豊かな水と白い塔が印象的な北海公園が目に入る。今では公園となっているこの北海には千年近い歴史がある。遼代には帝王が遊ぶ御用地となり、「瑶嶼」と呼ばれ、湖の中の瓊華島に多くの建築物が建てられていた。王室の庭園としてはイギリス・ロンドンの王室公園「セント・ジェームズ・パーク」(ヘンリー8世時期、16世紀前期造営)が有名であるが、北海はそれより600-700年も造営が早い。北海は「世界で最も早く造営された皇室の御苑」といわれ、中国に現存する旧王朝の御苑の中でも歴史の最も長い、最も完璧に保存される皇室の御園の一つである。
元代にも北海は皇帝の瓊島を中心に首都の大都が建設されている。その後、明・清両代にも御苑として整備が続けられ、北海は皇室の御園の壮麗さ、寺院宗教建築の荘厳さ、南方園林の秀麗さを併せ持つ名園になったのである。
北海の総面積は68.2ha、このうち陸地面積は29.3ha、水面面積は38.9ha。その建築物は中国古代の神話を模して配置され、瓊華島、団城は伝説の中の「蓬莱」、「瀛洲」、「方丈」を象徴している。北海の中心である瓊島にはそのシンボルでもある白塔が聳える。また瓊島の西側には湖に沿って5つの亭が並んでいる。この5つの亭が湖に映る姿を遠くから眺める、まるで5匹の竜が泳いでいるように見えるため、「五竜亭」の名で呼ばれていた。ここは、清の皇帝や后たちがここで月を愛で、花火を鑑賞し、魚釣りを楽しんだ場所である。
北海に来たなら、必ず九竜壁を見てほしい。中国の皇帝は「真竜天子」と自らを称し、また「九」が中国では伝統的に最大、永遠を意味するものであったため、「九竜壁」は最高権力のシンボルだとされていた。現在、九竜壁は中国でも3ヵ所にしか残っていないが、北海のそれは唯一両面に竜が描かれた特に珍しい九竜壁で、北海の一角に隠れるように立っているのに、毎日、多くの観光客で賑わっている。
北海の九竜壁は彩色の浮き彫りに上薬をかけて焼かれたもので、壁の両側にはそれぞれ紺碧の海と青空を背景に9匹の蟠竜(とぐろを巻いた竜)が勢いよく舞い上がろうとする姿が描かれている。九竜壁の縁や筒状の瓦が葺かれた頂の部位には、様々な形態をした大小の竜が600匹余りあり、中国の建築装飾の技術の高さをここに見ることができる。
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